「目立つこと」について考える
さまざまな文化や状況で、そして色々な人生の時期に、目立つ人は困難に突き当たることがあります。日本では、子供の頃から叩き込まれることわざがあります。「出る杭は打たれる。」偏見かもしれませんが、この国では人生の多くの場面でこれが当てはまるように思えます。
幼稚園では、拡声器を使って子供たちに規則を守らせます(日本以外では見たことがありません)。均一であることを好んで、着るのは同じ色、同じ形のスーツ。団体で飲食店に入ると、注文するのは人と同じメニュー。和を乱すことを避け、店に余計な手間をかけたくない。そして(時として無条件に)規則や規制に従うなど、例を挙げればきりがありません。
この国民的傾向には、尊敬すべき面もあります。しかし国や経済を再生し、人口を増やすために、起業家精神と新たなダイナミズムが求められている現在の状況には相応しくありません。日本は世界のどの国よりも急速に衰退しているのに。
パンクをはじめとする自己表現の国、英国では、個性を認めるだけでなく、個性的であることが良しとされます。日本人の見方とは反対に、多くの人は「杭は全部出るべきだ」と言うでしょう。
個人的には、目立つことはよい意味で自分という畑を耕し、「群れ精神」を持たずに職業人としての差別化を図ることだと思います。
この考え方を象徴する好きな言葉が2つあります。1つは「thinking outside the box」で「既成概念にとらわれない」、もう1つは「going the extra mile」で「他人がやらない努力をする」を意味します。
プロという視点では、コンピューターやインターネット料金が下がるに従って翻訳市場へも参入しやすくなっており、目立つことの重要性が増しています。
基本的な言語能力やブロードバンド接続があれば、(多くの翻訳会社と同じように)どんな分野のどんな仕事でも対応しますとばかりに、同じような履歴書や少し変えただけの履歴書を世界各国の翻訳会社に送りたくなるでしょう 。これでは、喉から手が出るほど仕事を欲しがっているのが明らかで痛々しく見えます。
万能であることは、トロール漁法に例えられます。網にかかる9割は役に立ちません。自分自身やそのサービスを差別化し、際立たせることをせずに、どんな案件でもそこそこのレベルでこなすことは、自分の能力を伸ばし、成長する貴重な機会を無駄にしているようなものです。
それに対して、2つか3つの得意分野に的を絞るほうが現実的だし、合理的です。自分の場合は、法律(主に契約書)、技術(仕様書やマニュアル)、そして金融(財務諸表)の3つです。
トロール網を捨てて釣り竿で釣ると例えればわかりやすいかもしれません。得意で好きな分野に集中すると、自分や仕事、ひいては収入にもプラスとなる可能性が高くなります。
目立つとは、自分が知り尽くしている池や湖で本当に釣りたい魚を狙うことです。
全部の人に全部のサービスを提供することはできません。
逆オークションサイトや超低料金での仕事が横行し、多くの案件を引きつけています。明白かもしれませんが、これはそのことを理解する人がまだまだ少ないことを表しています。
この投稿を執筆するにあたってインスピレーションを与えてくれたAndrew Morris( Read More
言語に魅せられて‐その1
Like most translators, I don’t just do this job to pay the bills… I simply love working with language. I’ve always been a “words person.” In fact, this plays out in my life in a number of distinct ways. I will always prefer e-mailing to phoning. Compliments or criticisms leave a far greater imprint on me in writing than when spoken.
Going back a little further, although tying shoelaces, naming colours and learning left from right were great childhood challenges, reading came very naturally. I am forever grateful that as a child, without the distraction of the Internet (feeling my age as I say that), each week saw me buried in numerous library books; whizzing through them cover to cover and absorbing vocabulary and expressive powers in the process.
ほとんどの翻訳者がそうであるように、自分は生活のためだけにこの仕事をしているのではありません。単に、ことばを扱うのが好きだからです。「言語好き」は今に始まったことではありません。
普段の生活でも、さまざまな場面でつくづく「言語好き」だなと思います。例えば、電話よりもメールが好き。褒められたり批判されたりするのは、話し言葉よりも書き言葉での方がずっと心に深く残ります。
さらに遡ると、子供の頃に靴の紐を結んだり、色の名前を覚えたり、右と左を区別できるようになるのにはとても苦労しましたが、本を読むことは自然に身に付きました。子供時代に、インターネットという邪魔者もなく(歳を感じますが)、図書館で借りてきた数えきれないほどの本を次から次へと読み漁り、ことばや表現力を吸収できたことは一生の感謝に値します。
今は、多くの人と同じように家庭を持ち、フルタイムの仕事をこなす中、Amazonを定期的に利用しながらも、新しい本を読む時間はたまにしかない贅沢となりました。ですので、なおさら、子供時代に多くの本を読んでおいてよかったと思います。I wasn’t a “Kindle Kid”!
フランス語とドイツ語を勉強し始めた頃、新たな言語の世界に想像力を掻き立てられました。自由奔放だったため、厳格な先生とよく衝突したものです。もちろん、そういった先生たちに対しても深く感謝しています。当時学んだことは確かな基礎となってこれまでの人生に役立ったし、これからもずっと役立つでしょう。
大学に入って最初に感銘を受けた言葉、それは「Don’t translate words, translate ideas」(単語ではなく、メッセージを訳せ)でした。初めて訳したぎこちない文「Rabelais’ exploration of teaching」が、教師の魔法にかかって瞬く間に「Rabelais’ flights of fantasy into the realms of learning」と変わったことは忘れられません。
メッセージを翻訳するには、単語だけでなく、原文を書いた人の考え方を理解し、翻訳言語で自然に表現することが大切です。読者に翻訳文を読んでいると感じさせない文章、最初から訳文の言語で書かれたかのように自然な文章で訳せれば最高です。
直訳と実際の意味にどれだけの開きがあるか、例を挙げてみます。
母親が子供によく言う言葉
“Would you like to tidy your room?”(お部屋のお片づけをしましょうね)
“Would it give you pleasure to tidy your room?”(お部屋のお片づけは楽しいわよね)
“Tidy your room now!”(さっさと部屋を片付けなさい!)
実際の意味は、社会文化的な側面があって初めて理解されます。すなわち文脈(散らかっている部屋を片付けさせるには、片付けなさいと命令する方がお片付けをしましょうと表向きに「誘う」によりもはるかに説得力がある Read More
助けを借りることについての前向きな考察
こんにちは!
ウェブサイトリニューアル後初のブログ投稿をお読みいただき、ありがとうございます。年末に近づくと、みなさんもこの1年を振り返ることと思います。良かったこと、悪かったこと、不快だったことなどを思い出し、来年はどんな年にしようかと考えながらプライベートや仕事の目標を立てることでしょう。英語には「Onwards and upwards」という表現があります。日本語にすると、「色々あるけど、だから人生は面白い。前を向いて歩いて行こう。 」ということでしょうか。
この1年は自分にとって厳しい年でした。ですから、この表現を実践すべくウェブサイトを刷新したのです。
座右の銘であるヘレン・ケラーの言葉が、私の心境を巧みに表しています。
「悲観論者が、星についての新発見をしたり、海図にない陸地を目指して航海したり、精神世界に新しい扉を開いたことは、いまだかつてない。」
私は楽観主義者なので、自分を取り囲む環境や生活を楽しみ、今あるものを大切にしています。特に仕事に関してはそうなのですが、一方で「才能」のない分野にも注力し、上達しなければということもわかっています。とはいえ、何が何でもがむしゃらに努力すべきなのでしょうか?それとも、専門家の手を借りたり、ソフトウェアを利用した方がよいのでしょうか?
残念ながら、私は言語の才能ほどに数学や芸術の才能を持ち合わせていません。MS Wordは使いこなせますが、ExcelやPhotoshopとなると何とか「耐えられる」程度です。
このため、事務作業やグラフィックデザインは外注し、自分が得意な分野に集中することにしています。請求書や文字数カウント、ファイル形式の変換などにはソフトウェアを利用します。
外注やソフトウェアは、自分を助けてくれる友達のようなものです。最近出会った中でも、次の3つとは親友になりました。
- - Practicount – 完璧な文字カウントソフトウェアは存在しませんが、これは多数のファイル形式に対応し、割の悪い作業を瞬時に自動化してくれます。価格の何倍もの価値があるソフトウェアです。
- - BCL easyConverter – PDF文書は「編集しない」ことを念頭に作成されるものですが、お客様は原文と同じレイアウトで翻訳してほしいと依頼されます。このソフトウェアは、PDF文書を原文に近い形でWord形式に変換します。
- - ABBYY FineReader – さまざまな賞を受賞しているOCRソフトウェア。その理由は一目瞭然。JPGやPDF文書をスキャンし、Word文書を作成するならこのソフトウェア。一応は満足できるレベルの文書を、最初からWordで作成したと思うくらいの精度で変換します 。